アイヌ文化目線について考える

1月22日、川湯温泉で「観光客受入スキルアップセミナー」が開催(主催:くしろ圏観光キャンペーン推進協議会)され、ファシリテーターとしてセミナーに参加した。その内容をお伝えしたい。
 セミナーは「アイヌ文化を活用した観光振興の方向を考える」をテーマに、秋辺日出男さん(阿寒アイヌ工芸協同組合専務理事)の「アイヌ文化目線をとりいれたガイディングの魅力について」と題した講演があり、その後、意見交換をおこない私も司会進行役として参加、計2時間ほどのセミナーとなった。参加者は、ガイド、自治体職員、観光関係者等約30名。地元弟子屈が約半数で、釧路市、厚岸町、霧多布からも参加があった。

○秋辺さんの講演のポイントは3つ、
・ガイドの心構えとして、時代区分の北海道と本州との違いや、アイヌに関する歴史的な基本知識は最低限そなえること。
・先住者にとって、北海道150年に失われたものとそれの回復としての社会環境の整備(白老のウポポィ建設などへ)などを理解すること。
・アイヌ文化のhappy な部分だけでなく、unhappyな部分もガイドは自分の引き出しにおさえておいてほしいこと。

 また、アイヌ語やアイヌ地名における、伝承上の齟齬などネットや一部の解釈での理解は危険であることをふまえつつ、地名などはアイヌも和人も共有するものなので、ガイドをする上で魅力になる。さらに、伝説やアイヌと和人の発想の違いなども紹介し、同じ土地に生まれたもの同士、アイヌ文化を共有財産として活用していくスタンスを意識することが重要と締めくくった。
 特に、次の若い世代にアイヌの文化歴史を伝えることは、北海道の歴史を知る我々の権利でもあると強調した。
 私は講演のメモをホワイトボードでしめしたので、以下写真でご参照下さい。

秋辺さんの講演内容をボートに書き込み、意見交換会の素材提供

 その後、意見交換で各地からの参加者にアイヌ文化を生かしたガイドの実態をお聞きした。それぞれの地域にはアイヌテーマをメインにしたプログラムはないが、それぞれのガイドの場面ではアイヌ地名やアイヌ文化に関連する紹介をしている旨の発言があった。また、旅行代理店からはアイヌの当事者ガイドをメインとしたガイディング事業である「ユーカラ街道事業」の紹介があった。自治体関係者からはプロモーションなどでは、アイヌの負の歴史に関しては出来るだけ話さないようにしている、との実態も率直にお話いただいた。
 秋辺さんからは、アイヌに関連した観光資源の掘り起こしや、アイヌ自らがガイドする事業への期待も表明された。

30数名のガイドや観光関係者、自治体関係者と意見交換

 ファリシテーターは進行役なので自分の意見は出来るだけ言わない、とおもっていたが、是非、秋辺さんの被差別体験の話をお聞きしたいと質問した。というのも、セミナー前に2回ほど秋辺さんと打ち合わせしていたなかで、unhappyな歴史をガイドとしておさえる重要性を再認識させられ、私自身ガイドにおける「心と技」の部分では、「心」の記憶として秋辺さんの被差別体験を留めたいとのおもいがあった。
 講演タイトルの「アイヌ文化目線をとりいれたガイディングの魅力について」は秋辺さん自身の命名ではないそうだが、理屈っぽく考えるには適したものだ。「アイヌ」とは何か、「文化」とは何か、「目線をとりいれる」とはどんな表現か、我々の「ガイディング」スタンスは、お客さんに伝える「魅力」とは…。そういう「技」を駆使しつつ、決して忘れることのない「心」を秋辺さんの体験をとおし、参加者と少しでも共有できたとおもえた。

私の頭のなかで整理したテーマの図解

 私は前日、豪州からの観光取材メンバーを川湯温泉まで案内してきた。2000年シドニー五輪は先住民アボリジニの最終聖火ランナーであるキャシー・フリーマン(彼女は400mの金メダリストにもなった)の印象が残る民族融和の演出が施された開会式であった。秋辺さんも2020東京の開会式演出で先住民部分の演出を担うようだ。何かの縁を感じた。総合統括である野村満斎氏の演出コンセプトは「和の心」だそうだ。その「和の心」にアイヌの心がどのように含まれ、表現されるのか、とても楽しみになってきた。

 最後にまとめとして、会場ではまとめきれなかったので紙上でご勘弁いただきたい。
 我々が目指す目線は、不幸な過去を忘却の彼方に追いやるものではなく、それを包含し多様な文化を共有しつつ、ともに目指す未来像であってほしいとおもう。グローバルには「民族の共生」から「自然と人の共生」へ、ローカルでは「持続可能な自然と地域」を実現する”心と技”をお互い磨いていきましょう。

我が家の飯寿司づくり物語

この樽に35日間漬けられておりました

 4年ほど前から飯寿司づくりをはじめた。母の手作り飯寿司は年末年始の味だったが、高齢になりそれも叶わず、連れ合いといよいよ我々の出番登場となった。師匠は古くからの友人で家庭科の教師経験もある料理の達人。きちっとしたレシピと発酵食品としての飯寿司の道を入門とあいなった。
 さて、北海道の飯寿司魚種といえば、一にハタハタ、二に鮭、三にカレイという感じ? しかし、近年、ハタハタは漁獲量減と手間がかかり、食品管理が難しいこともあり家庭飯寿司からは姿を消しつつある。やはり、鮭。それも色鮮やかなベニザケが我が家の定番。木樽に阿寒の森で採取したクマイザサを使用。これも採る時期を誤ると綺麗で殺菌効果のある笹の効果を損ねることになる。
 ちょっと話が硬くなったので肝心の味について、約35日間、5度以下0度以上の適正温度管理も順調にすすみ、カムロという醗酵をしめす白い塊も順調に出現し、 今年の味は、我々の間では、「ばっちり!」とおもっていたが…。  関係各位に配布後、師匠にも配達し、数時間後、師匠からの電話。大根がしなり気味なこと、温度管理と重石の重量の確認等々、細かな指摘と注意事項。まだまだ道は続く。
 飯寿司は本当に奥が深く素晴らしい発酵食品だとおもう。この食文化を家庭料理として繋げていければとおもうのだが、我が家の継承者は「なんか、生ごみみたい」とのリアクション。いやいや食文化は地域で、道産子が伝える、ということでいいんでないかい。

良品ベニザケを安価に確保し、塩で丁寧に揉む。塩は豊富です。
ベニザケの陸封型が阿寒湖原産のヒメマス。これの飯寿司もあるそうな、食べてみたい!
新鮮な野菜をふんだんに入れる。大目の野菜が我が家流。
漬け込み作業中。
笹にくるまれた飯寿司がいよいよご開帳!
我が家のシェフです。私も助監督として参画してます。
約1ケ月を越える沈黙を破りオープン!不安と期待が入り混じる瞬間。

帯広で武四郎展を見てきました

サイコロ飴のアイデアがいいね。同封されている武四郎の双六は観光土産の先達。

久しぶりに帯広に武四郎展を見に行ってきました。武四郎の野帳が意外なほど小さかったこと、掛け軸の鶴の舞の絵がとても素敵だったこと、貴重な資料が一杯で皆さんにも伝えたいんだけど会場は撮影禁止。会場スタッフの説明では、国の重要文化財なので…、とかあまり説得力のある説明ではありませんでした。釧路でおこなった資料展はほとんどコピーだったので撮影可で皆さん自由にパシャパシャしてました。発表から50年以上経って著作権もクリアされた国民共有の知的財産でしょうから、写真撮影も許可されることを望みます。一般的な理由としては、1)著作権保護2)フラッシュ等による作品劣化3)他の観客への迷惑。とのことですが、2)3)は同意できるので、フラッシュ撮影は禁止でOKではないでしょうか。欧州を旅行すると美術館も博物館もほとんど撮影自由でとても知的好奇心を刺激されます。

というわけではないですが、
作品図録も買わずに、武四郎グッズに目が行く私でした。武四郎の双六マップ付きのサイコロキャラメルがグーでした。

塘路湖の御神渡り

塘路湖で御神渡りと恐ろしいほどの氷の鳴り音を聞く。
御神渡り は神様が湖上を渡った跡ということで諏訪湖が有名ですが、道東では屈斜路湖にもできる。この日の英国出身のお客さんはもちろん初めて観るそうで、でも湖上に響く氷の鳴り音のほうが衝撃的だったようで、しきりにscary-scary(スケアリー:怖い、おびえる)と呟いていました。今年は小雪で、雪が積もると保温効果であまり出来ないそうですが、しばれが強く、例年より立派な御神渡りが登場したようです。

塘路湖の御神渡りです。氷の鳴き音も凄い!
お客さんも丹頂カラーで撮影に夢中
冷え込んで来て、タンチョウたちの出勤も遅くなりつつあります
吐く息が白く、鳴き声でオスとメスの判別が白い息の形でわかります
今年の写真ではありませんが、阿寒湖でもフロストフラワーが花盛りのようです。

オオワシが湿原で、

湿原のワイルドライフセンターでオオワシと遭遇。リハビリゲージの支柱に留まり、なかの仲間の様子を確認。そのうち、にわかに鳴き合う両者。振り向けば、道路際の高木にオオワシ5~6羽が。お客さんと「去年、怪我をした仲間の様子を見に来たんじゃない」とか、「仲間を救出に来たのかね」とか、文学的想像。やっと渡りを終えて釧路湿原に到着した感じでした。 タンチョウも給仕場に200羽前後集まり、トウキビをいただいていました。

給仕中のタンチョウたちの動きも見ものです
ゲージのなかにはリハビリ中の亜成長たちが見えます
近くの高木には5~6羽のオオワシが様子をうかがっていました

釧路湿原、阿寒・摩周の2つの国立公園をメインに、自然の恵が命にもたらす恩恵を体感し、自然環境における連鎖や共生の姿を動植物の営みをとおしてご案内します。また、アイヌや先人たちの知恵や暮らしに学びながら、私たちのライフスタイルや人生観、自然観を見つめ直す機会を提供することをガイド理念としています。