SLを見つめているとなぜか仏像を拝む気分になった

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子どもたちの声援で、さあ出発!

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私の父は国鉄マンであった。釧路市の浪花町に国鉄の機関区工場(現在、国の合同庁舎)で、おもにSLの修理をしていた技術者だった。私が小さかった頃、溶接の全国大会に出場するほどの腕前で、家のなかにも鉄製の加工品がいろいろあった。両親の実家が知床の斜里町だったので、国鉄勤務の特典で家族パスというのがあって、夏冬休みはいつも釧網線で実家に行っていた。
私は特に鉄道ファンというほどでもないが、「SL冬の湿原号」に乗ると昔の情景がよみがえる。あの頃は、確かC58がメインだったような気がする。冬の野上峠(川湯駅~緑駅間)は重連でも歩くほどのスピードで峠超えをし、斜里駅につくと、叔父さんが馬橇で迎えに来てくれた。
いつもお弁当はおにぎりだったが、ごく稀に駅弁を買ってくれることがあった。子どもにとっては夢のような出来事で、川湯駅には「しいたけ飯」、斜里駅には「鶏めし」という名物弁当もあり、ほんの数度の出来事であったが、その時の感動は今も忘れない。バヤリースオレンジという缶ジュースがあって、初めて買ってもらった時は、嬉しさあまって、汽車に酔って、全部吐いてしまった。2月25日は父の命日である。「SL冬の湿原号」は、手入れの行き届いたクラシックカーだ。よく見ると仏像をおもわせるフォルム。いつまでも、とは無理な話だが、来年も勇姿を見せてほしい。
おもわず合掌。

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