わが家の味噌はもう、30年ほど手作りでまかなっています。この時期に道内産の大豆を仕入れ、仕込みの作業を丸1日おこない。1年間寝かせると手作り味噌の出来上がり。一度食べるともうこれが一番。30年続いてきたのがなによりの証です。塩分控えめ生活ではありますが、様々な味噌料理を楽しみたいものです。
あまり特別なことはないのだけれど、私達の旅スタイルを今回の5泊6日東北旅行でご紹介します。
今回の旅の目的は、仕事も兼ねて山形県日本海の飛島(とびしま)という渡り鳥の中継地で根室の仲間と一緒に、バードウォッチャー達に道東を宣伝することです。そして、山好きとして出羽三山(羽黒山、湯殿山、月山)巡りと山寺(立石寺)参詣をあわせた旅です。
1)いろいろな乗り物に出会う旅:離島や山などけっしてメジャーではない処を廻るにはおのずと交通手段をどうアレンジするかが課題です。ネットの検索サイトは本当に役に立つ。今回も、自家用車(釧路→新千歳空港)、飛行機(新千歳→秋田空港)、列車(ローカル線、新幹線、夜行急行等)、レンタカー、路線バス、連絡船を取り混ぜての旅。移動する楽しさを満喫しました。
※今回の教訓:離島観光を取り入れる場合はスケジュールや予約はあまりかっちりとしないこと。今回も飛島の帰り便が欠航になり、その後の予約変更を余儀なくされるところでした。事前のカード決済も慎重に。
2)どこに泊まる?:宿泊はネット予約が中心ですが、あまりこだわりがないので、易くてコストパフォーマンスのよいビジネスホテルもよく使う。山などは選択肢のない場合がほとんどなので、多種多彩の宿泊環境を楽しむ余裕も必要。まだ宿坊体験がないので是非次回は。
※今回の教訓:安くてよい、という姿勢もほどほどに。古いものが好きだけど、古いと汚いは違いますよね。
3)何を食べる?:美味しいものは人に聞く。美味しい食事に出会った時は作った人にそれを伝え、あわせたグルメ情報を引き出す。飛島は漁業8割、観光2割で2百人ほどの離島。宿食には島ならではのものもあり女将さんに解説いただく。他の島では食べないが飛島では食べる海草もあり、風土はフードなんだなぁ。
※今回の教訓;シティーホテル利用時は街食なので、山形市では郷土料理屋さんへ。全国チェーンの居酒屋ではなくて、地元ならではのリーズナブルな料理店を探すのはなかなか難しいが、今回は当り。山菜をたっぷりいただき、料理人からは嬉しいサービス品も。「これは何」とか「旨い!」とか、声がけが大事。こういう店では、メニュー品より、予算をしめしてお任せしたほうがいいかも。「どちらから?」「北海道です」「へぇ~!」。
こういうときは北海道に生まれてよかった、とおもう。
4)何を楽しむ:私たちのような自然好きには、何処に行っても、その土地や時季の野鳥、野草、樹木などに会えるので、旅先で珍しい(私たちにとって)ものに出会った時の記憶は、その旅を印象付ける。今回の飛島は残念ながら野鳥はあまり豊作ではなかったのだが、野草や常緑広葉樹林なども会わせて充分魅力を堪能できた。羽黒山参道ではアカショウビンの囀りに聞ほれた。小さな双眼鏡を是非、旅の携帯品に。
※今回の教訓:酒田市のアートは充実。土門拳記念館と酒田市美術館はいずれも市立で10万都市でよくぞここまでという造り。さらに美術館では有元利夫の回顧展開催中で、ラッキー!
旅先でのアートチェックも忘れずに。思わぬ幸運に巡りあることもあるかも。
ということで、何時もお客様の立場でご案内できるガイドになるために、年に1度は、観光客として各地におもむくのも修業の一つであります。
それは突然の衝撃であった。一瞬目の間に現れた角と頭部はアッとおもった瞬間、白煙とともにフェイドアウトし、急停車と同時にエアバックが目の前に開いた。夜更けの予期せぬ出来事であった。「やったぁ!」という被害者とも加害者ともつかないショックが全身を覆った。
シカの交通事故は釧路地方管内だけで年間(平成25年)約7百件にも及び東北海道は特に多い。国道240号通称マリモ国道も多発地帯の一つである。阿寒湖温泉での単身赴任生活では、週末の帰宅と日常業務に市街地と行き来するなかでの交通事故、なかでもエゾシカをどうやり過ごすかが最大の危険リスクであった。斜め横断、集団での左右点検無視、一旦停止不良は習性というものと理解していなければならないのだが…。シカして、我が愛車と雄シカ君は予後不良となり、私達夫婦は地域住民、通行車輌、警察の方々にお世話になり無事生還の運びとなった。
道内のシカの生息数は約60万頭といわれて、なかでも道東エリアは多い。松浦武四郎の『東蝦夷日誌』には、「弓矢を持ったアイヌが枯野に向かって走り出すと、その地面が動きだした」と記述されるエゾシカの描写があるので、その昔はもっといたようだ。アイヌ語のユックは<鹿>という意味とともに<獲物>という意味でもあるようで、いかに食糧としての存在が大きかったか推察できる。一時は大雪の天候変動で絶滅の危機もあったようだが、近年の増加は著しい。作物等の農業被害、広葉樹の樹皮を食べるための森林被害、そして交通事故被害とエゾシカ=害獣というイメージも出来つつあるが、エゾシカが悪いわけではない。
北海道は野生生物としては初めて管理計画を策定し、適正生息数に管理するため捕獲計画もたて自然のバランスをとろうとしているが課題は多いようだ。
阿寒湖温泉は北海道有数の温泉地であり、観光地である。国の特別天然記念物であるマリモはもとよりアイヌ文化と豊かな自然というブランドは古くからこの地を人気観光地にしてきた。近年、全国総観光地化状態になるなか、グルメを武器にした新興勢力に対応するために、阿寒湖温泉も数年前からグルメ開発を進めてきた。
その先陣ともいうのがエゾシカ肉を使った「阿寒やきとり丼」である。新ご当地グルメとして、地元の魅力的な食材を活かしたグルメ開発の一環として、商工会若手グループがメインとなって食材と調理法の研究がすすめられ、誕生したのが、3種類のエゾシカ肉の串焼とりを盛り合わせた丼物である。
私が阿寒湖温泉に赴任した平成20年前後、マリモ国道沿いの広葉樹は樹皮をエゾシカに食べられ丸裸状態で素人ながらこの森はどうなるのだろうと危惧していた。阿寒湖周辺の森林を管理する前田一歩園にとっても森林被害は深刻だったようで、広葉樹は今もその影響にさらされているという。一歩園では生きたままエゾシカを捕獲する生体捕獲手法(沿岸でおこなわれるサケ定置網漁のイメージ)を確立し、多い年で七百頭ものエゾシカを捕獲した。このエゾシカを阿寒町の業者が養鹿(ようろく)牧場で一定期間育成し、衛生完備の処理により様々な食品の開発販売をすすめていた。
<エゾシカこそ、地産地消のエース>とばかり、さまざまなグルメ開発が試みられ、その一つとして「阿寒やきとり丼」が完成した。エゾシカが何故、「やきとり」なのかという疑問は今も昔もつきまとうが、とにかく皆でそう決めたのだ!
エゾシカは低カロリー高タンパクで鉄・亜鉛などミネラル豊富なヘルシー食材である。欧州でもジビエ料理として愛食されているそうな。
様々な被害を軽減し、地域産業の振興にもつながり、消費者の健康にも資するとなれば、三大被害を一発逆転、解決できるというもの。「阿寒やきとり丼」のキャッチフレーズも<食べるシカない!>、キャラクターも<ヘルシカ君(ヘルシーなシカ)>となり、華々しくデビューした。大ヒットとまではいかないが、地域一丸となった売り込みは全道全国におよび、エゾシカの食材としての名声も徐々に広がりを見せているが、グルメだけで一気に観光客が増えるほど現実は甘くなく、阿寒湖温泉の観光客は下落傾向が続いている。
釧路港が世界一の水揚げ量を誇った昭和50,60年代、その主力はイワシであった。このイワシのほとんどは牛などの家畜飼料となり、直接食材になる量は僅かであった。当時、世界の食糧問題を研究するワールドウォッチ研究所では、開発途上国(当時は中国も)で肉食文化が進めば世界は飢餓が深刻化すると警告した。家畜を育てて食糧にすることは、直接、トウモロコシやイワシを食糧にするのに比べ、はるかに効率が悪いのだ。
シカして、阿寒のエゾシカは、阿寒の森で捕獲され、わずか約50キロ移動して牧場で飼育された後、食用化されるのである。今、問題になっているフードマイレージ(食材の輸送距離。生産と消費をつなぐエネルギーや二酸化炭素など環境負荷を低減する動きにつなげる指標)でも超優等生である。このことをワールドウォッチ研究所の日本支部の方にお話したところ、「でもね、食べ物は嗜好の問題があって難しいですね」とつれない返答。私の熱弁は空転したのであった。
食べ物は難しい。理屈をこねても、グルメを前にしては、「それはさておき…」状態である。
「食べるシカない」というフレーズにはどこか、仕方がない、これしかない、文句言わずに…、という響きがある。
押し付けでなく「阿寒に来てもらい、食べてもらうシカない」のだ。
そして、自然や風土、歴史と文化、人々の暮らしを見聞きし、エゾシカと阿寒の人々、ひいては自然と人の共生のおもいが「阿寒やきとり丼」のなかに盛り込まれているのを是非、味わってもらいたい。一発逆転の秘策はない。
地道に続けるシカないのだ。
弟子屈・川湯は阿寒国立公園に含まれるが、どうも本家は阿寒湖、分家は屈斜路・摩周という印象がある。弟子屈の住民の方々には、腑におちないおもいが深いのではないか。昔から国立公園の名称変更の提案はあったようだが、この度はその動きが本格化しているようだ。
阿寒・摩周国立公園になるようだが、3大カルデラが由来とすれば「屈斜路」がどうなった、ということになるが、そこはそれなりの理由がつくのだろう。
阿寒・屈斜路・摩周国立公園が筋ではないか、とおもいつつ、やっぱり一般的には阿寒・摩周国立公園がしっくりいく。命名理由がどうなるのか、そちらの方に関心が行くのは悪趣味であろうか。
さて、ゴールデンウィークの道東は、賑やかな各地の観光地からははずされた印象がある。やっぱりアウトドアには少し寒すぎ、案の定、冬の痕跡が今年は特に随所に残っている。
ということで、行く冬、来る春が交差する弟子屈・川湯の印象フォトスケッチです。あたらしい弟子屈もいいね。
北の新しい生活スタイルを紹介している雑誌「スロウ」から、新しい旅スタイルの雑誌「スロウな旅 北海道」が創刊されました。その記念する初刊に、阿寒クラシックトレイルが紹介されています。
ガイドが案内する旅というテーマなので、私のクスリ凸凹旅行舎がメインになっています。阿寒クラシックトレイル研究会ですすめているイベントなのでちょっと心苦しいです。綺麗な表紙で書店でも目に付きます。是非、お手にとってご覧下さい。
ちなみに「スロウ」本体の次号にも取材報告が掲載されます。こちらは前田一歩園の森づくりが鎌田記者の素敵な文章で紹介されます。お楽しみに。
今年の阿寒クラシックトレイルは9月末から10月末までの間に連続イベントで「里の道」「川の道」「山湖の道」を開催予定です。
今年も晴れるといいね。