「フェノロジーカレンダー」カテゴリーアーカイブ

風の言葉に諭されながら(5月)~凸凹WABISABI自然ごよみ/8

上旬の湿原はヤチボウズの新緑が(達古武遊歩道にて)

「風の言葉に諭されながら別れゆく二人が5月を歩く、木々の若葉は強がりだから風の行く流れに逆らうばかり…」
 井上陽水の『5月の別れ』を聴くたびに古里の斜里の海岸を思い出す。今年も長い冬が終わり春の息吹を感じ始めたらはや5月。コロナや世間の騒ぎに気をとられてたままにアッという間に6月に入ってしまった。
 ということで、5月の振り返り自然ごよみになりました。まずは花の言葉から。

引き続き鳥の言葉も。
風の言葉に諭されながら季節は廻ります。

三寒四温の季節です(4月後半)~凸凹WABISABI自然ごよみ/7

ホロムイツツジが温根内の高層湿原に可憐な花を咲かせる4月下旬の釧路湿原

本来は冬に寒い日が3日続くと次の4日間は暖かくなるのを三寒四温というそうです。しかし、最近は早春の気候がこれにあたるようで道東も4月の中下旬がこれにあたる感じです。1月、2月は絶対的に寒いですが、3月、4月は相対的に寒い。本州が20℃越えの日に5℃以下の最高気温もこの時期ならでは。今年はコロナ禍休業中でいつもならGW明けに替えるタイヤも4月中旬に夏タイヤに衣替え。さっそく、その後に寒い日が続き峠や山間部では雪景色。いつもの散歩道から見る雌阿寒岳もすっかり雪化粧をしなおしました。
1858年に釧路から阿寒湖温泉を経て道東内陸部の探訪をした幕末の探検家、松浦武四郎一行の探訪ルートを仲間と一緒に歩いてきました。武四郎一行が雌阿寒岳に登って阿寒湖温泉に下山したのは旧暦の3月27日で、今の暦では5月10日です。武四郎は山道が途中で雪道で、ハイマツの下に雪が積もって難儀したことを日誌に記しています。ボクもGW中に雌阿寒岳山頂付近で吹雪に巻かれ迷ったことがありました。
冬と春が行きつ戻りつしながら春の使者たちは確実に季節の移ろいを伝えてくれる、そんな北の大地の卯月です。

スプリングエフェメラルがやって来る(湿原の4月前半)~凸凹WABISABI自然ごよみ/6

エゾアカガエルの大合唱は3月下旬から4月中頃まで

平地の雪も融け、草花もチラホラ。最初はフキノトウをはじめ、早春の野草が芽を出します。
エゾアカガエルの合唱にあわせて、水辺にはミズバショウ。スプリングエフェメラル(春の妖精たち)の一番手はフクジュソウ。そしてエゾエンゴサク。その後にキバナノアマナの黄色い花やヒメイチゲの白い花が…。
中旬になると高層湿原には春一番のホロムイツツジやヤチヤナギが可憐で超地味な花を咲かせます。
北帰行の冬鳥たちはまだ居残り組もいて、湖沼にはオオハクチョウ、オオヒシクイ、キンクロハジロ、カワアイサ、ミコアイサなどが
帰りのタイミングを見計らっているようです。夏鳥はヒバリやハクセキレイ、オオジュリンが初便、その次がノビタキ、ベニマシコ、カワラヒワ、アオジたちが到着です。こんな感じで4月の前半が過ぎていきます。

釧路が一番寒い時期②~凸凹WABISABI自然ごよみ/5

冬鳥たちの北帰行と春一番のフクジュソウ。早春の天と地のシンボル

前回の「釧路が一番寒い時期」の絶対値でしたが、今回は相対値。例年4月上旬は時に降雪がある日もあり、以前勤めていた市役所の道路管理課では新年度になって除雪車の出動をしたこともありました。
今朝、4月7日の釧路市の最低気温は-3℃。最高気温の予測は5℃。全国予報では本州、四国、九州、沖縄は軒並み20℃以上なので、トリプルスコアならぬ4倍! ちなみに英語ではquadrupleというそうな。略してquad(クアッド)。今、対中国対応で4カ国連携(日米豪印)をしているのをクアッドといってますね。
それはさておき、この時期、早春の湿原は、といえば茶色系のなかにちらほら緑の芽吹きが見られ、目を凝らすと春一番の花も咲き始めています。ちなみに釧路の桜(エゾヤマザクラ)の開花予想は5月上旬で例年より早いです。
長い冬のエンドロールを待ちきれずに早春の湿原を散策してきた最新スナップで北国の春を味わってください。

釧路が一番寒い時期~凸凹WABISABI自然ごよみ/4

おおよそ-20℃以下で熱湯を外気に投げ飛ばすと氷の結晶になる現象。(映像提供 松岡篤寛)

 ボクは根がお調子者である。その場の雰囲気で結構いい加減なことをいう。自然ガイドなので基本的には科学的な根拠のある説明を心掛けている。しかしその場の雰囲気でつい口が滑って後で調べると違っていることがあって一人赤面するが後の祭り。

お客さん「今日は寒いですね。さすが北海道」
ボク「いえいえ今日はあったかいほうですよ。こんなもんじゃありません」
お客さん「一番寒いのはいつ頃ですか」
ボク「大体1月中頃から2月にかけて2週間ぐらいすごく寒い時期があります」
お客さん「マイナス何度ぐらいになるんですか?」
ボク「大体-20℃以下になります。阿寒湖温泉だと-30℃以下になります。30℃以下になるとちょっと次元が違います。ハイ。」

 コロナ禍で科学的根拠の重要性が叫ばれている。本当に一番寒い時期はいつ頃なのか気象庁の過去データで調べてみた。

 月毎の過去30年間の平均値で見ると一番寒かった月は1月が19回、2月は11回で年間の中では1月が一番寒い月となる。次に日毎の平均値を見てみると最低気温が一番低い期間は1月28日から2月2日までの六日間である。最低気温平均-11.4℃であるが、この前後も0.1℃単位の誤差なので-11℃以下になる1月21日から2月7日までのおおよそ2週間強が一番寒い期間と言っていいのではないか。中でも日平均気温が-6.1℃を記録している1月25日から1月29日までの五日間が1日を通して最も寒い時期になる。

 次に観測史上日最低気温のベスト10を見てみると過去30年間で釧路の最低気温は1922年1月28日に記録された-28.3℃である。阿寒湖畔では2019年2月9日に記録された-30.7℃である。

 ボクのいい加減さを検証してみると<1月中旬から2月にかけて2週間ぐらいの寒い期間>はほぼイイ加減である。最低気温が20℃以下も間違いない。ただ阿寒湖畔に関して言えば最低気温も-30℃そこそこなので、ちょっと大げさな話である。ちなみにボクは2010年から2014年までの5シーズン阿寒湖温泉で生活していたがこの間に-30℃以下の記録はない。しかしボクの中では-30℃以下の暮らしは体験済みのことになっている。いい加減である。

最近話題のジュエリーアイス。河口で凍結した氷が海に流れたものが、岸に寄せられたもの太平洋側で発生。オホーツク側は流氷ですね。

 さてこの時期に釧路でしてはいけないことは自宅を離れることである。複数日にわたって自宅を離れることはご法度である。2006年1月20日から24日まで甥っ子の結婚式で名古屋に行きその足で熊野古道を歩いてきた。自宅に戻ると何か雰囲気が違い不吉な予感がした。水道の元栓は止めて行ったのだが水が出ない。そのうち台所の下からじわじわと水が滲み出てきた。トイレに行って驚いた。便器の下から水が滲み出て白い粉が散らばっている。その粉の根元をたどるとなんと便器が割れている。元栓は閉めたのだが建物の中に残っていた水が凍結し管を破り漏水状態になった。水回りの配管をはじめ、便器、湯沸かし器が全滅し、旅行費用の倍ほど復旧費用にお金がかかった。以降、我が家の家訓「1月、2月に旅行はご法度。水道の元栓を止める場合は管に残った水を全て排水すること」その技術を身につけるために水道屋さんの指導を受け、マニュアルを作った。

 阿寒湖温泉に住んでいた時は最低気温が-20℃をこすとスケート大会の日は気温が上昇するまで競技が停止された。阿寒湖畔は内陸で山に囲まれた湖の辺なので冬は風が弱い。しかし、-30℃というのはやはり体感としては次元が違う。漁業協同組合の-50℃の冷凍庫から-40℃の冷凍庫に移動しただけで暖かくようなもので、顔の表面水分が凍結するような感覚がある。

 しかし体感温度というのはまた別で、強風下の-10℃より無風の-30℃の方が過ごしやすい。風速1m毎に体感温度は1℃下がるといわれてるので-10℃の風速20mの強風下では体感温度は-30℃になる。

 以上は釧路に住んでいる人の側の話で、観光で最も寒い時期に釧路を訪れるというのもその時期ならではの風景や体験をすることができるお勧めの時期なのだ。

 気嵐(けあらし)は釧路市内でいえば陸上の冷たい空気が海へゆっくりと流れ出し、釧路川が凍結し河口付近の海面の水蒸気を冷やして蒸発させ、霧(気嵐)が生まれる現象。気嵐は北海道の方言だそうだが、気象用語では「蒸気霧」。つまり水温より外気の方が冷たいので蒸発し霧が立ち込め幻想的な風景を作り出す。これは川霧ともいって湿原を流れる釧路川流域でも川沿いに立ちこめる現象が見られる。

川霧のけあらしのなかで佇むタンチョウが美しい音羽橋雪裡川流域。周りの樹氷もならでは。-20℃以下になるとけあらしが発生しすぎてタンチョウが見えなくなることもあるとか。

 ダイヤモンドダストという空気中の水分が凍結して朝日にあたって空気がキラキラ光って見える現象もある。最近阿寒にする仲間が熱いお湯を散布してそれが固体化する現象を写真にアップした。ボクが幼かった頃は銭湯に行った帰りだとか濡れたタオルをぐるぐると空中で回すといきなりカチカチになったものだ。人工的な遊びも進化している。

釧路川河口のけあらし。氷が割れて蓮の葉状になる現象もこの時期ならでは。

 寒さが苦手な方にはお勧めしないが、北海道らしさを体感するなら最も寒いこの時期もお勧めである。ちなみに齢をとるとだんだん体感も鈍くなってくる。暑さや寒さに関して鈍感になる。お客様の安全対策で欠かせないのは夏の熱中症、冬の低体温症であるが、わが身において最も気をつけているのは低体温症である。自分の感覚を過信すると危険である。そもそも体感がズレているという前提にたって、備えたいとおもう今日この頃。

厳冬期のお供は湯たんぽ。この時期は24時間ストーブを付けている方も多いが、我が家は部屋が乾燥気味になるので、電気毛布もダメで湯たんぽがこの時期には活躍します。