「凸凹日誌」カテゴリーアーカイブ

わたしたちの旅スタイル第1話「旅のテーマはなんとやら」(海外編 全7話)

コッツウォルズのパブリックフットパス、ルートNo.1を歩く
  1. 旅のテーマはなんとやら

 私の初めての海外旅行は高校時代の部活(写真部)の友人と行った1985年の中国シルクロード約2週間の旅であった。中国で個人旅行が開放された翌年、この旅行には写真家であった友人の撮影済みフィルムと未使用フィルムを旅先で交換するといったミッションもあったが、大変ながらも充実した旅で、海外旅行における心構えとノウハウの多くはこの旅で身につけたようにおもう。

 それから幾年月、多くの旅を経験したが、近年、連れ合いと一緒にクスリ凸凹旅行舎(2015年)を開業してからは、「身体の動くうちに…」を合言葉に二人で年に2回、国内と海外の行きたい処に出向いている。

旅のテーマになっているのは、

  • 素敵なトレッキングルートを歩く:登山路から散策路、フットパス、歴史道路など様々な道を歩くこと。登山に関しては国内の山岳が中心ではあるが、本場のアルプスのトレッキングも夢である。仕事の影響ではあるが、英国湖水地方やコッツウォルズのパブリックフットパスやローマも古代道路アッピア街道など有名どころとともに、いろいろな国の街歩きも大好きで旅先だと1日10kmくらいは歩いている。
  • 西洋絵画を鑑賞:連れと初めて行った欧州がイタリアで、その時のルネサンス絵画体験が基で、絵画鑑賞は旅の大テーマとなった。わが夫婦は通常、連れの趣味に感化されて私も参画し、いつのまにか私がのめりこむパターンが一般的だが、美術も同様。美術館、教会など訪ねながら、ルネサンスから近代絵画までの絵画鑑賞をとおして古代文明からキリスト教社会や西洋の近代化の背景を知ることは奥が深く、まだまだ道は長い。
  • お客さんの目線で訪問地の魅力をさぐる:最近、海外からのお客さんのガイドが増えつつある。同じ目線で観光の問題を考えるには、自分たちが旅行者として海外に出かけることが一番。個人旅行で他国を旅する上での不安や喜びや楽しみを身をもって体感する。ガイドのみならず、我が国や地域の観光振興の課題点もよくわかる。
紀元前312年に着工されたローマから地中海への道、アッピア街道
英国コッツウォルズ、ブロードウェイの牧場を歩くフットパス
最初のイタリアでルネサンスの名画に出会う(フィレンツェ、ウフィツィ美術館)
欧州の美術館はほとんど撮影自由。名画とツーショット。(アムステルダム美術館)
ベルギーの古都ブリュージュの運河観光船。四か国を操り途切れなく笑いをとるガイド
英国湖水地方でネイチャーガイドの半日ツアー。ガイドが自家用車で案内。

知床・根室でバードウォッチングツアー

野付半島の先端部から知床半島を一望する。野鳥のパラダイス!

英国ソールズベリー近郊の街から来た、男性を案内して釧路・羅臼・野付・根室を2泊3日のバードウォッチングツアーをして来ました。彼は野鳥に関して非常に詳しくほとんどの鳥を詳細に認識できるバードウォッチャーです。
おもなスケジュールは…、
1日目、釧路を発って、鶴居音羽橋、サンクチュアリ、鶴居村周辺。その後屈斜路湖に向かいハクチョウ観察。中標津を経由して羅臼町「鷲の宿」に宿泊。シマフクロウを観察。
2日目、羅臼周辺を観察の後、野付半島で 観察。風蓮湖の湖岸にある民宿風蓮に宿泊。
3日目、予定していた落石クルーズが悪天のために欠航。明治公園で観察、温根元ハイドで観察後、納沙布岬に移動。納沙布岬から鶴居村まで移動し観察後、釧路空港にて終了しました。

天候は全行程ほぼ好天でした。特に2日目は快晴、道東の山並みを一望できる景観は私もそう経験できるものではありません。しかし、最終日は前夜の降雨、降雪により路上がアイスバーンとなりかなり厳しい路面状態でしたがなんとか無事終了しました。
彼のお目当ての鳥は一番にエゾフクロウ。それにシマフクロウ他初見の鳥を見ることが最優先。結果として総数71種類。内、初めての鳥は約10種類でした。
特にシマフクロウは「鷲の宿」での夜間観察ではなかなか現れず、午後4時から待って11時30分にやっと登場してホッとしました。
また野付半島は先端部から歩いてさらに30分進むと開口部分の水面に水鳥が集結し、コクガン、ホオジロガモ、ハクチョウ、ウミアイサなどが集結し、さらに陸上部ではユキホオジロを観察することができました。
根室の明治公園では記録の少ないナキイスカとギンザンマシコのメスをゲット。

エゾフクロウは初日見ることができず、道中4箇所の観察ポイントも全て駄目で「何とか見たい!」との彼からのリクエストは日に日にプレッシャーとなり、最後にまた、釧路でトライすることにしました。
結果は、バッチリ!!! 最後の最後にお目当ての鳥に出会えて、最高でした。
英国のバードウォッチャーはこういう最大の喜びの時は、「Bonanza!」(ボナンザ!)といいます。
ツアー後、彼からのメールには最大の賛辞と、「北海道に恋におちた。既に再訪の用意をしている」と書かれていました。
私はガイドの身でありながら、彼から実に多くの野鳥の識別を教えてもらい、大変充実し学びの多い三日間のガイドでありました。
授業料を払ってもいいくらい(笑)

ガンの渡りの季節です

数種のガンが一斉に飛ぶ姿は壮観

十勝の浦幌町の南側に位置する三日月沼周辺は、ガンの渡りで賑わっています。先日(11月6日)に秋の渡りで集うガンたちを見てきました。春は3月22日に見ています。一時、絶滅の危機に瀕していたハクガンやシジュウカラガンも関係者の努力で数を増しているようです。特にハクガンは主要繁殖地の北極海ウランゲリ島での保護活動がうまくいっているようで、今回も沢山の若鳥たちを確認することができました。
個体数では、シジュウカラガン>ハクガン>マガン>ヒシクイという感じで、ハクチョウもいました。釧路周辺(シラルトロ湖、鶴居村など)で見かけるヒシクイは亜種オオヒシクイなのですが、十勝のそれはヒシクイなのか、オオヒシクイなのか、ちょっと見た目では確認できませんでした。

手前からシジュウカラガン、マガン、ヒシクイ、ハクガン、空を飛ぶ2羽のハクチョウとハクガン

大きな群れが少なくとも2~3箇所確認できたので全体数は把握し切れません。
長い時間、飛翔の姿、採餌の様子、色合いや姿を見ても飽きない晩秋のひと時でした。

ハクガンの家族、白い成鳥(2羽)と若鳥(今年生まれ)たち
ハクガンの主要な繁殖地はウランゲリ島です
グレーっぽい若鳥と白の成鳥のハクガン
シジュウカラガンと奥にマガン
ヒシクイは足と嘴がオレンジ色です
十勝の空にガンが舞います

コクガンとアッケシソウに会えた秋の野付半島

かつてのトドワラの風景はありませんが、やはり不思議な魅力の景観です

野付半島は東北海道に位置し、根室海峡に突き出た釣り針のような形をした砂嘴です。野鳥や野草の楽園とも言える処で、最近は冬場の水平線で写真を撮るイベントがヒットしているようで、新たな観光の魅力も発掘されています。
10月27日に「オンネニクルの森を歩こう」というイベント(主催 別海町郷土資料館)に友人からお声かけをいただき、普段歩けない処に入れるとのことで参加してきました。
イベントはアイヌや擦文期などの先人たちの遺跡を見たり、海岸線や森のなかを歩きながら野鳥や景観を楽しむものでしたが、あらためて野付の魅力にふれる1日でした。ガイドを辞めたら1シーズンくらい、空き家を借りて野付に住みたいとおもいました。

オジロワシがお出迎え
足元にはアマモとミズナラの落ち葉


野鳥はガンカモの渡りの時期で、お目当てのコクガン達にも出会えました。カムチャッカ半島を経由してやってくるのですが繁殖地は北極海沿岸なので相当な長旅です。渡りの道程はGPSによる調査がおこなわれているようで、いずれはっきりする時がくるのかもしれませんが、まだ謎の多い鳥です。英名のBrent Gooseのブレンドはネスカフェ・マイルドブレンドのブレンドなので何かと混じっているんでしょうか? 首筋のレース模様がなんともいえなえず、この鳥のエレガントさを表しています。今回、海岸線を散策しているとアマモ(ほとんどの淡水系の水鳥にとっての食糧)がわんさか打ち上げられていました。ガンカモを見ると海岸線から近い順に、コガモ、ヒドリガモ、ハシビロガモ、コクガン、オオハクチョウと沖に向かって配置されています。つまり、首の短い順ですね。砂地に根を張り、光合成して生長するアマモの生育にとって野付の内海は最適の環境なのでしょう。
半島の基部から先端に向かって車を走らせていくと、右手(湾内側)に淡水のガンカモたち、左手(海側)に海鳥やカモメたちが飛び交い、前を見るのを忘れます。ガン・カモより早い時期に渡るシギ・チドリたちは春はGW、秋は8月中旬頃がベストシーズンだそうです。

首筋の白いレース模様がコクガンのチャームポイント
手前岸側から順に首の短い鳥が配置されてます


この時期、野草はまったく期待していなかったのですが、なんと!アッケシソウが迎えてくれました。その名のとおり厚岸のカキ島で発見命名されたのですが、現在は能取湖の群生が有名になりました。これは増殖事業をしているためで、自然環境の状態で見れるのは野付半島です、とガイドさんが言ってました。紅色に紅葉する部位が何なのか、知らないもの同士で、やれ花、いや茎、葉っぱじゃないのと盛り上がっていましたが、正解は茎及び枝の部分だそうです。標高0m前後(つまり海岸ぎりぎり)の塩湿地に繁茂する1年草とのこと。何かしら親近感のわくアッケシソウでした。

これがアッケシソウ!食べることも出来るんだそうです
手前はアマモ。甘い藻が由来のようで茎が甘いとのこと。食べてみましたが微妙。


野鳥野草ファンの方は先刻ご承知かもしれませんが、駆け出しファンの方やバードウォッチングやってみようかなぁ、と思っている方は是非、野付半島をお忘れなく。

ここはまさしくラムサールサイトの代表選手

北北西に進路をとって。

大日岳からの絶景。手前、奥大日岳。中央、剣岳。左奥、白馬岳連峰。

毎年恒例の山岳研修報告です。
体力の限界も近づきつつある(既に過ぎているのだけど)ここ数年は日本の有数の山岳路踏破を目指してきました。
それも終盤に近づき、難関の南アルプス縦走を計画しました。予備日、下山後の観光視察も入れて7泊8日の壮大な計画。出発が近づきつつあるなか、どうやら台風15号の動きが怪しく、このままだと南アルプス直撃!
今回予定の荒川三山、赤石岳山脈縦走3泊4日は奥深く、入山までまる1日かかるほど。もしも、台風でアクセス道路が寸断されたら大変。まかり間違えば、ずっと帰ってこられなくなるのでは、との妄想も駆け巡り、東京に到着して急遽、目的地を台風の影響の少ない北北西に進路変更した。目的地を決めたのも東京着後だったので、登山仲間から地図をスマホで送ってもらい、同じくスマホで直前台風予報をチェックしながらの決定。
スマホと新幹線、これがドタキャン変更登山を実現させた原動力。台風には勝てないが、うまく使えば文明の力は凄いもんだ。年寄り頭には相当疲れる所業だったが、これもいずれはAIがサポートしてくれそう。
変更先は日本有数の山岳リゾート立山。早朝の新幹線に乗って富山まで約2時間、富山電鉄に乗換え立山駅からバスで登山口の称名滝についたのはほぼ正午。日本一の落差を誇る滝を愛で、期待はずれの山菜蕎麦をかき込んで、いざ、目指すは大日岳・奥大日岳の2泊3日縦走。

日本最高落差(350m)を誇る称名滝

ここまでは超順調に文明の力を実感したが、これからが大変だった。
台風の影響か、とにかく暑い。もう秋の気配の釧路からいきなり35℃の世界へ。そして標高差1000mくらいを登らなければならない現実。南斜面で陽はカンカン。給水とリンゴやゼリー飲料が五臓六腑に染み渡る感じ。やっとのおもいで夕暮れ時に大日平に到着。ここは立山弥陀ケ原湿原という我が国で一番高いところにあるラムサール登録湿地でもある(現地の説明版で初めて知ったんだけど…)。初日の泊まりの山小屋にやっと到着したら、山小屋の主人が「塩さ~ん、お風呂沸いてますのでどうぞ~~」。ちょっと耳を疑ったが、確かに本州の山小屋ではお風呂や場所によっては温泉を使える山小屋もあるが、この時はまさかの坂。こんな山奥でお風呂に入れて、入口で確認したアサヒドライビール350ml700円もいただけるなんて。
風呂上り、夕日の山々を眺めながら冷えたビールで安着祝い。お客も私たちをいれて5名。何んとも言えない幸福感が全身を包んだ。

日本有数の山岳リゾート立山へは立山駅からは専用バスだけが走る専用道
山小屋での風呂上りのビール。言うことなし!


 さて、2日目も快晴。前日の疲労回復と今日のパワーアップのため秘薬アミノバイタル3500mmgを飲んで出発。目指す大日岳は標高2501mなので、今日も標高差1000mを一歩一歩。私の経験では、アミノバイタルは約2時間が効力維持時間。快調な前半は早朝でまだ陽も当たらず、気温もそれほどでもなかったが山頂に近づく頃から前日並みの暑さ(高度は上がっているから気温は昨日より低いはずだが…)。おまけにアミノバイタルも切れてきて、赤ランプ点滅状態で大日岳頂上。ここからさらに稜線づたいにアップダウンを繰り返し奥大日岳をめざす。「奥」とつくからには奥なんである。遠いのであ~る。
陽はカンカンと照らし続け、山小屋で買った400円のジュースもアッというまに飲んでしまい、限界が近づきつつある。
こういう状況だと夫婦喧嘩が勃発しやすい。案の定、今日の宿泊山小屋を確保していないので、早めに電話したらいい、とか、電話がつながらない、とか、なんでこんな山の上なのに電話がつながらないんだ、とか…。水を絞りきったボロボロ雑巾みたいになって、夕刻、やっとみくりが池温泉小屋に到着。温泉に浸かって、評判の食事をいただき、急転直下・大日岳縦走登山は無事終了。

弥陀ケ原湿原の地沼を抜けて登坂路へ
山頂は今年一番と言う快晴

人生でこれほど汗をかいたことはなかった、とおもわせるほどの発汗と今年一番という快晴のなかの山行であった。
教訓。これからの気象変動の激しい昨今、スムーズに旅行をするには、的確な情報収集と迅速な旅程変更、さらには事前の変更プランも念頭においた計画作りが重要になる。本番の登山も楽しかったが、前後の旅程調整にも感慨深い研修登山であった。

下山時にであったライチョウ一家
踏破ルートを振り返る
みくりが池に映る立山連峰の雄姿