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食べるシカない<旅する阿寒>第5話

味心-4
3種類の串肉が味わえる「阿寒やきとり丼」

それは突然の衝撃であった。一瞬目の間に現れた角と頭部はアッとおもった瞬間、白煙とともにフェイドアウトし、急停車と同時にエアバックが目の前に開いた。夜更けの予期せぬ出来事であった。「やったぁ!」という被害者とも加害者ともつかないショックが全身を覆った。
シカの交通事故は釧路地方管内だけで年間(平成25年)約7百件にも及び東北海道は特に多い。国道240号通称マリモ国道も多発地帯の一つである。阿寒湖温泉での単身赴任生活では、週末の帰宅と日常業務に市街地と行き来するなかでの交通事故、なかでもエゾシカをどうやり過ごすかが最大の危険リスクであった。斜め横断、集団での左右点検無視、一旦停止不良は習性というものと理解していなければならないのだが…。シカして、我が愛車と雄シカ君は予後不良となり、私達夫婦は地域住民、通行車輌、警察の方々にお世話になり無事生還の運びとなった。

ぶつかった鹿は…
ぶつかった鹿は…

道内のシカの生息数は約60万頭といわれて、なかでも道東エリアは多い。松浦武四郎の『東蝦夷日誌』には、「弓矢を持ったアイヌが枯野に向かって走り出すと、その地面が動きだした」と記述されるエゾシカの描写があるので、その昔はもっといたようだ。アイヌ語のユックは<鹿>という意味とともに<獲物>という意味でもあるようで、いかに食糧としての存在が大きかったか推察できる。一時は大雪の天候変動で絶滅の危機もあったようだが、近年の増加は著しい。作物等の農業被害、広葉樹の樹皮を食べるための森林被害、そして交通事故被害とエゾシカ=害獣というイメージも出来つつあるが、エゾシカが悪いわけではない。
北海道は野生生物としては初めて管理計画を策定し、適正生息数に管理するため捕獲計画もたて自然のバランスをとろうとしているが課題は多いようだ。
阿寒湖温泉は北海道有数の温泉地であり、観光地である。国の特別天然記念物であるマリモはもとよりアイヌ文化と豊かな自然というブランドは古くからこの地を人気観光地にしてきた。近年、全国総観光地化状態になるなか、グルメを武器にした新興勢力に対応するために、阿寒湖温泉も数年前からグルメ開発を進めてきた。
その先陣ともいうのがエゾシカ肉を使った「阿寒やきとり丼」である。新ご当地グルメとして、地元の魅力的な食材を活かしたグルメ開発の一環として、商工会若手グループがメインとなって食材と調理法の研究がすすめられ、誕生したのが、3種類のエゾシカ肉の串焼とりを盛り合わせた丼物である。
私が阿寒湖温泉に赴任した平成20年前後、マリモ国道沿いの広葉樹は樹皮をエゾシカに食べられ丸裸状態で素人ながらこの森はどうなるのだろうと危惧していた。阿寒湖周辺の森林を管理する前田一歩園にとっても森林被害は深刻だったようで、広葉樹は今もその影響にさらされているという。一歩園では生きたままエゾシカを捕獲する生体捕獲手法(沿岸でおこなわれるサケ定置網漁のイメージ)を確立し、多い年で七百頭ものエゾシカを捕獲した。このエゾシカを阿寒町の業者が養鹿(ようろく)牧場で一定期間育成し、衛生完備の処理により様々な食品の開発販売をすすめていた。
<エゾシカこそ、地産地消のエース>とばかり、さまざまなグルメ開発が試みられ、その一つとして「阿寒やきとり丼」が完成した。エゾシカが何故、「やきとり」なのかという疑問は今も昔もつきまとうが、とにかく皆でそう決めたのだ!
エゾシカは低カロリー高タンパクで鉄・亜鉛などミネラル豊富なヘルシー食材である。欧州でもジビエ料理として愛食されているそうな。
様々な被害を軽減し、地域産業の振興にもつながり、消費者の健康にも資するとなれば、三大被害を一発逆転、解決できるというもの。「阿寒やきとり丼」のキャッチフレーズも<食べるシカない!>、キャラクターも<ヘルシカ君(ヘルシーなシカ)>となり、華々しくデビューした。大ヒットとまではいかないが、地域一丸となった売り込みは全道全国におよび、エゾシカの食材としての名声も徐々に広がりを見せているが、グルメだけで一気に観光客が増えるほど現実は甘くなく、阿寒湖温泉の観光客は下落傾向が続いている。
釧路港が世界一の水揚げ量を誇った昭和50,60年代、その主力はイワシであった。このイワシのほとんどは牛などの家畜飼料となり、直接食材になる量は僅かであった。当時、世界の食糧問題を研究するワールドウォッチ研究所では、開発途上国(当時は中国も)で肉食文化が進めば世界は飢餓が深刻化すると警告した。家畜を育てて食糧にすることは、直接、トウモロコシやイワシを食糧にするのに比べ、はるかに効率が悪いのだ。
シカして、阿寒のエゾシカは、阿寒の森で捕獲され、わずか約50キロ移動して牧場で飼育された後、食用化されるのである。今、問題になっているフードマイレージ(食材の輸送距離。生産と消費をつなぐエネルギーや二酸化炭素など環境負荷を低減する動きにつなげる指標)でも超優等生である。このことをワールドウォッチ研究所の日本支部の方にお話したところ、「でもね、食べ物は嗜好の問題があって難しいですね」とつれない返答。私の熱弁は空転したのであった。
食べ物は難しい。理屈をこねても、グルメを前にしては、「それはさておき…」状態である。
「食べるシカない」というフレーズにはどこか、仕方がない、これしかない、文句言わずに…、という響きがある。
押し付けでなく「阿寒に来てもらい、食べてもらうシカない」のだ。
そして、自然や風土、歴史と文化、人々の暮らしを見聞きし、エゾシカと阿寒の人々、ひいては自然と人の共生のおもいが「阿寒やきとり丼」のなかに盛り込まれているのを是非、味わってもらいたい。一発逆転の秘策はない。
地道に続けるシカないのだ。

 

新しい弟子屈に出会う

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「温故知新」という骨董店が川湯駅前にこっそりOPEN

弟子屈・川湯は阿寒国立公園に含まれるが、どうも本家は阿寒湖、分家は屈斜路・摩周という印象がある。弟子屈の住民の方々には、腑におちないおもいが深いのではないか。昔から国立公園の名称変更の提案はあったようだが、この度はその動きが本格化しているようだ。
阿寒・摩周国立公園になるようだが、3大カルデラが由来とすれば「屈斜路」がどうなった、ということになるが、そこはそれなりの理由がつくのだろう。
阿寒・屈斜路・摩周国立公園が筋ではないか、とおもいつつ、やっぱり一般的には阿寒・摩周国立公園がしっくりいく。命名理由がどうなるのか、そちらの方に関心が行くのは悪趣味であろうか。
さて、ゴールデンウィークの道東は、賑やかな各地の観光地からははずされた印象がある。やっぱりアウトドアには少し寒すぎ、案の定、冬の痕跡が今年は特に随所に残っている。
ということで、行く冬、来る春が交差する弟子屈・川湯の印象フォトスケッチです。あたらしい弟子屈もいいね。

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「PANAPANA」から「森のホール」への延長上に「温故知新」という斜め45度の変則ゴールデンライン
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抜群のコスパの生活骨董があるぞ!
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5/2のキタコブシ。相当気の早いマグノリア。
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豪雪の爪跡。第三展望台は柵崩壊にて通行止め。迅速な対応を。
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スニーカーに残雪、弟子屈の春~
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「森のホール」のランチスィーツにマンゴーがあった。弟子屈の新しい味。これをランチに使う「森のホール」は凄い!
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弟子屈を流れる釧路川にキセキレイ、手前の岸にはハクセキレイ。ここは上流か、中流か、悩む。
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新緑のオオウバユリ。美味しそうだが…、食べた人はいるんだろうか?

新しい旅スタイルの提案「スロウな旅」

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北の新しい生活スタイルを紹介している雑誌「スロウ」から、新しい旅スタイルの雑誌「スロウな旅 北海道」が創刊されました。その記念する初刊に、阿寒クラシックトレイルが紹介されています。
ガイドが案内する旅というテーマなので、私のクスリ凸凹旅行舎がメインになっています。阿寒クラシックトレイル研究会ですすめているイベントなのでちょっと心苦しいです。綺麗な表紙で書店でも目に付きます。是非、お手にとってご覧下さい。
ちなみに「スロウ」本体の次号にも取材報告が掲載されます。こちらは前田一歩園の森づくりが鎌田記者の素敵な文章で紹介されます。お楽しみに。
今年の阿寒クラシックトレイルは9月末から10月末までの間に連続イベントで「里の道」「川の道」「山湖の道」を開催予定です。
今年も晴れるといいね。

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家族にはいきなりジジくさい、と言われました。
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いい写真があるね。本当に雄阿寒を眺めながらのカヌーはいいね。
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研究会のメンバーも登場!しぶいですね。
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峠越えで山湖(雄阿寒岳と阿寒湖)が見えると昔の旅人の気持ちにシンクロします。

釧路湿原にも春が来た~

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厳しい冬と麗らかな春

 

★IMG_0154釧路湿原周辺の散策路をチェックしてきました。釧路市湿原展望台から温根内木道を経由して温根内ビジターセンターまでの約6.5kです。快晴の好天のもと、春の息吹を体感してきました。野鳥たちは去る鳥、来る鳥が交錯する時期ですが、夏鳥も結構な種類がやってきています。野草はフキノトウが目立ちますが、草花の新芽が芽吹いて、ヤチボウズにもスゲの緑がちょっと見えます。エゾアカガエルが合唱していますが、近づくとパタッと鳴き止みます。声は聞こえど姿は見えず、卵は沢山水のなか状態です。やっと一匹捕まえて記念写真。生物達も気持ちがいいのか、よく姿を見せてくれました。今年は是非、一度このコースを歩いてみてください。釧路湿原の魅力を体感できますよ。
<4/22に会えた生物たち>
野鳥:タンチョウ、シマエナガ、ヒガラ、オオジシギ、ノビタキ、オオジュリン、ハシブトガラ、オジロワシ、キジバト、キバシリ、ヒシクイ、ゴジュウガラ、ベニマシコ、ハシブトガラス、トビ、カシラダカ、アオジ
その他:エゾアカガエル、シマリス

 

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高山植物の春紅葉
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なあ~んだ?
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はーるばる来たぜノビタキ!
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鳥ネクタイのヒガラ
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柳が好きですカラ
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成虫で越冬したのでボロボロ
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カシラダガ北へ帰る
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紅が染みるぜベニマシコ
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緑なき湿原
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春の陽を浴びるエルタテハ
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シマリス参上
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かわいいエナガ

 

春採湖で春をトル

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春採湖と博物館をバックにオニグルミの羊顔

 

釧路市民の憩いの水辺、春採湖で春を撮ってきました。1周約4kほどで植物も多く、野鳥の宝庫でしたが最近はどういうわけか、野鳥のほうは寂しくなりました。とはいえ、常連のオオバン、早めのカワラヒワ、さらにはノビタキ(写真なし)もいました。湖面では百を超えるカワアイサの群れが北帰行の途中に立ち寄って休憩しているのではないかとおもいます。一斉に潜水しまた一斉に浮上する動作を繰り返していましたが、きっと集団ストレッチに違いありません。
南向きの斜面にはエゾエンゴサクが咲き誇り、湖岸はフキノトウやバイケイソウの芽吹きが全国唯一の石炭列車の線路脇も飾っています。エゾヤマザクラはまだ頑なに芽を閉じ、5月をまっています。オニグルミは変身の用意万端、ハマナスも地味だけと芽も赤いところを見せてくれてます。春採湖は、昔は春鳥ともいいましたが、今日は、私の春撮湖でした。

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石炭運搬列車が散策路と併走します
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沼尻川河口にはコイの群れ
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カワラヒワがさえずっていました。なかなかの美声
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常連のオオバンはここで繁殖
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プレーの準備に思案顔
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エゾエンゴサクとバイケイソウの花園オープン
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マガモの夫妻。雄の尾羽の巻き上げに注目
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ハマナスの芽吹き。やっぱりハマナス色
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エゾヤマザクラは硬く芽を閉ざし
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①百羽をこえるカワイアサの群れ
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②一斉に潜水
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③また一斉に浮上を繰り返す